認知症

認知症とは

 年をとると、誰もが人の名前をすぐに思い出せなくなったり、ものをどこにしまったか忘れたりするものです。

 認知症は、そのような加齢による物忘れとは違い、正常だった脳の働きが徐々に低下する病気です。体験したこと自体を忘れてしまったりして、以前のように日常生活を上手く送ることができなくなってしまいます。

 認知症には薬や手術によって予防や治療が可能な認知症と、現時点では根本的な治療法がまだ開発されていない認知症があります。認知症の種類によって、症状の現れ方や治療方法はそれぞれ異なりますが、早い段階で診断を受けて適切な治療を開始することが大切です。

認知症の原因

 日本では、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」が3大認知症と言われており、中でも最も多いのが「アルツハイマー型認知症」です。

 「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」は変性疾患と呼ばれ、脳の神経細胞の数が徐々に減少する病気です。根本的な治療法はありませんが、薬によって症状の進行を遅らせることは可能です。

 「血管性認知症」は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などが原因でおこる認知症です。高血圧、糖尿病、脂質異常症などをしっかり治療することで予防や進行の抑制が可能です。

 また、頭部外傷によって、頭蓋骨と脳の間に血液がたまる「慢性硬膜下血腫」や、脳室が拡大する「正常圧水頭症」、甲状腺の働きが低下にする「甲状腺機能低下症」などでも認知症が認められることがあります。いずれも脳外科手術や投薬によって治療が可能です。

認知症早期発見のポイント

  • 同じことを何回も言ったり聞いたりする。
  • 財布を盗まれたという。
  • だらしなくなった。
  • いつも降りる駅なのに乗り過ごした。
  • 夜中に急に起きだして騒いだ。
  • 置き忘れやしまい忘れが目立つ。
  • 計算の間違いが多くなった。
  • ものの名前が出てこなくなった。
  • ささいなことで怒りっぽくなった。

 認知症は早く発見して、正しく診断されることで適切な治療やアドバイスが受けられる病気です。認知症かな、と思ったら早めにかかりつけ医に相談しましょう。

認知症の治療

 ここではもっとも患者数の多いアルツハイマー型認知症の治療について説明します。

・日々の生活での治療

 認知症と診断されても、本人にできることはたくさん残っています。家庭内で本人の役割や出番を作って、前向きに日常生活を送ることが大切です。

 アルツハイマー型認知症の治療には、書き取りやドリルなどの認知リハビリテーションを行います。それ以外にも、昔の出来事を思い出すこと、家族以外の人たちと交流すること、音楽・絵画・陶芸などを楽しむこと、囲碁・将棋・麻雀などを楽しむこと、ウォーキングなど軽い運動を続けること、ペットを飼うことなども脳の活性化につながります。

・薬による治療

 アルツハイマー型認知症の薬物治療には、認知機能を増強して中核症状を改善し病気の進行を遅らせる薬や、行動・心理症状を抑える薬が使われます。医師にご相談ください。

認知症の方への対応の仕方

・普段の心構え

 「認知症は病気である」ということを理解して、本人の気持ちの寄り添った対応を心がけましょう。認知症の初期は患者本人も不安で辛い思いをしています。家族や周りの人がイライラしたり煙たがると、本人が消極的になりさらに症状の進行を早めることになります(とわかっていてもついイライラしてしまいますが・・・)。

 急かすとできることもできなくなってしまします。自分でやろうとしているときはなるべく見守りましょう。間違ったことでもすぐに訂正や説得せず、別のことを提案して場面を切り替えましょう。

 「どうしたら円滑・円満に事が運ぶか」ということを優先して対応することで、より良い関係を保つことができるそうですが、それ以上に大切なことは看病する側がストレスを溜め込まないことです。すべてを自分で抱え込まずに家族で分担し、介護などの補助をうまく活用しましょう。困ったら一人で悩まずにクリニックに相談してください。

・日常生活の工夫

  • 大切な約束や大事な連絡先はメモを書いておきましょう。
  • ものの保管場所を忘れないように、引き出しなどにラベルを貼ったりしてわかりやすくしましょう。
  • ボードなどに1日の予定を書いておくと次の行動に困らないですみます。
  • その日の出来事を日記に書くことで記憶を増強できます。
  • アルバムなどを見返して、これまでのことを思い返すことも記憶の増強に役立ちます。

・困った行動への対処法

被害妄想

 認知症では「物を盗られた」「お金がない」などの被害妄想がよくあります。このような場合には、頭から否定せずにまずは話を聞きましょう。他の提案をして、気持ちをほかに向かわせる工夫も効果的です。

徘徊

 徘徊は自分の居場所がわからなくなり不安になったり、目的を忘れてしまうなどの理由から起こります。徘徊すると事故の原因になります。日頃から名前や連絡先が分かるものを身につけてもらったり、最寄りの交番などに相談して、保護されたときに連絡してもらえるようにしておきましょう。

 最近では居場所のわかるGPSタグやGPSを埋め込んだ靴も販売されています。このようなグッズの活用も有効かもしれません。

失禁

 失敗をせめないでください。寝る前に定期的にトイレに誘ったり、貼り紙をしたり夜は照明をつけてトイレの場所をわかりやすくするなどの工夫をしましょう。

介護に疲れたら

 介護する家族に負担がかかり過ぎないよう、様々なサポート方法があります。区などの相談窓口を利用しましょう。わからなければクリニックへどうぞ。

 同じような経験をしている方と話をすることはストレスの軽減にもなりますし、有益なアドバイスや情報を得る機会にもなります。積極的にそのようなコミュニティーと関わりましょう。