認知症とは
認知症とは、・・・ 症候群 たくさんの種類があります。代表的なものはアルツハイマー型認知症
最近、物忘れが多くなった気がするんじゃが・・・
認知症じゃろうか・・・?
物忘れだけで「認知症」とは言えませんが、認知症の前段階の「軽度認知障害」である可能性があります。医師にご相談ください。
認知症では、体験した内容ではなく、体験したこと自体を忘れてしまいます。
そのため、老化によるもの忘れには自覚がありますが、認知症によるもの忘れは自覚(病識)がありません。
認知症の最大の危険因子は「加齢」です。現在、85歳以上の高齢者では23.7%が認知症と診断されており、今後40%まで上昇すると考えられています。厚生労働省の推計では、2020年の認知症患者数は602〜631万人であり、これは東京都の人口の約半分に当たります。認知症は、患者本人やその家族のQOLを損なうだけでなく、社会にとっても大きな脅威となっています。
現時点では、すべての認知症を治す薬や治療法があるわけではありませんが、治療によって症状を改善したり、進行を遅らせることができる場合もあります。認知症の種類によって、症状の現れ方や治療方法はそれぞれ異なりますが、早い段階で診断を受けて適切な治療を開始することが大切です。
認知症の主な症状に記憶障害があります。最近、物忘れがひどい、仕事や家事でのミスが多い、同じ話題を繰り返すようになったなど、「普段と違うな」と思ったら、まずお近くの認知症サポート医の受診をお勧めします。
MCIとは
MCI(mild cognitive impairment)とは軽度認知障害のことです。認知症のように生活に支障をきたすレベルではないものの、もの忘れなどが頻回におこる状態を指します。MCIの概念は、米国メイヨークリニックのロナルド・ピーターセン博士らが認知症予備軍を抽出する目的で考えたものです。MCIの診断にはウィクスラー記憶検査(WMS-R)やリバーミード行動記憶テスト(RBMT)などのテストが使われます。MCIの場合、近時エピソード記憶に障害が認められます。
MCIの方の10%程度が1年以内に認知症に移行すると考えられています。 しかし、MCIは認知症ではないため、一般的に薬などは処方されません。また、認知症治療薬がMCIから認知症への移行を遅らせるという証拠もありません。そのため、MCIでは運動、食事、周りの人たちとのコミュニケーションなど生活にリハビリテーションの要素を取り入れることによって症状の改善を目指します。 MCIの方の10~40%の症状が改善されるという報告があります。認知症の早期介入には認知症予備軍であるMCIの発見が重要になります。
もの忘れがあっても、自立した生活ができていれば、
認知症ではなくMCI(軽度認知障害)の可能性があります。
認知症の早期発見
認知症早期発見のポイント
最近、お父さんが何度も同じことを言うんです。
でも、本人に指摘すると「そんなことはない!」
と怒られてしまって・・・・
認知症の特徴の一つは、本人に病識がないことです。
自分が正常だと思っているのに、誤りを指摘されるので
イライラして怒ってしまうのです。
まずは、かかりつけ医に相談しましょう。
認知症になると最近の出来事の記憶から失われていくため、数時間前の出来事を忘れてしまったり、同じことを何度も話したりするようになります。認知症は早く発見して、正しく診断されることで適切な治療やアドバイスが受けられる病気です。以下のような症状が現れたら、認知症の初期である可能性があります。
- 同じことを何回も言ったり聞いたりする。
- 財布を盗まれたという。
- だらしなくなった。
- いつも降りる駅なのに乗り過ごした。
- 夜中に急に起きだして騒いだ。
- 置き忘れやしまい忘れが目立つ。
- 計算の間違いが多くなった。
- ものの名前が出てこなくなった。
- ささいなことで怒りっぽくなった。
認知症サポート医とは
東京都では認知症に対して助言や支援を行う「認知症サポート医」を養成しています。認知症サポート医とは、認知症サポート医養成研修を終了し、認知症対応に習熟したかかりつけの医師です。
困ったことがあれば、お近くの認知症サポート医にご相談ください
柳沢ファミリークリニックも認知症サポート医に認定されていますので、困ったこと、わからないことがあればお気軽にご相談ください。
認知症はどのように進行するか?
認知症の種類
認知症とは、単一の疾患の病名ではなく、同様の症状を示す病気の総称(症候群)です。したがって、認知症の種類によって原因や治療法も異なります。
認知症には多くの「型」があります。
日本では、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭葉性症」が四大認知症と言われています。中でも最も多いのが「アルツハイマー型認知症」です。アルツハイマー型認知症は認知症全体の7割近くを占めています。アルツハイマー型認知症は、80歳以上の日本人の20%以上がかかっていると言われており、世界で一番多い認知症です。
アルツハイマー型認知症
「アルツハイマー型認知症」は、変性疾患と呼ばれ、ベータやタウと呼ばれる異常タンパク質が脳の神経細胞にたまることによって神経細胞が死んでしまい、脳が萎縮していく病気です。初期には物忘れなどの記憶障害が現れ、徐々に悪化して見当識障害へと進みます。見当識障害とは、自分の置かれている状況を正しく認識することができない状態であり、日にちや時間、自分のいる場所、周囲にいる人々などがわからなくなります。
アルツハイマー型認知症の患者は、自分が認知症であるという「病識」が希薄です。しかしながら、自分自身の異変に薄々気が付いているため、家では不機嫌になりがちです。一方、外では愛想よく振舞い、自分の症状を取り繕おうとします。また、自信がないために、周囲の人に確認を取る「振り返り現象」がよく見られます。
アルツハイマー型認知症の特徴的中核症状は、最近のことから忘れてしまう「近時記憶障害」と視空間の認識に異常をきたす 「視空間認知障害」 です。視空間認知障害のテストには、立方体などの図形を描く「図形模写」、時計と針を描く「時計テスト」、試験者が手指で作った形をまねる「手指テスト」などがあります。
レビー小体型認知症
「レビー小体型認知症」もアルツハイマー型認知症と同じく、脳の変性疾患一つで、認知症全体の4.3%を占めます。「レビー小体」とは、 アルファ・シヌクレインと呼ばれるタンパク質 の固まりです。レビー小体型認知症は、大脳皮質の神経細胞の中にレビー小体が蓄積し、神経細胞が死ぬことによって起こります。レビー小体型認知症では、初期に現実にはないものが見える「幻視」や、眠っている間に奇声をあげるなどの異常行動(レム睡眠行動障害)が起こることがあります。
また、レビー小体が中脳の黒質に蓄積するとパーキンソン病になるため、レビー小体型認知症では手足が震える、小刻みに歩くなどのパーキンソン病の症状が認められることがあります。パーキンソン病は歩行が困難になるため、転倒への注意が必要になります。うつ病を併発する率が高く(50%以上)、症状の重さが日によって異なる(日差変動)のもこの型の特徴です。
アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症は、現在、根本的な治療法はありませんが、薬によって症状の進行を遅らせることは可能です。
レビー小体型認知症の特徴に、リアルな幻視をはじめとした視機能異常があります。幻視があらわれなくても「視界がぼやける」、「なんとなく見えにくい」などの症状を伴う場合はレビー小体型認知症の可能性があります。
前頭側頭型認知症
「前頭側頭型認知症(ピック病)」は、前頭側頭葉性症の一つで認知症の1~10%を占めると言われています。前頭側頭型認知症では、理性をつかさどる前頭葉と言語をつかさどる側頭葉が萎縮するため、感情や行動のコントロールができなくなったり、言葉が理解できなくなったりします。
とくに前頭葉に強い病変がある場合、善悪の判断ができなくなり、万引きなどの問題行動を起こすようになります。また、 同じことを毎日同時刻に繰り返す 「周かい」などの異常行動も起きることがあります。記憶障害よりも行動異常が先に起こるため、性格が変わったのだろうと思われて見過ごされているケースがあります。
現在、前頭側頭型認知症には「意味性認知症」、「進行性流暢性失語症」など3つのサブタイプがあるとされています。
?? 前頭側頭葉変性症に三タイプあるのでは??意味性認知症 前頭側頭葉変性症の一つ 言葉の意味がわからなくなる 進行性流暢性失語
前頭側頭型認知症では、前頭葉に障害がでるため、物事を理性的に考えることが出来なくなります。そのため、愛想が悪く敵対的な態度をとったり、問題行動引き起こしたりしがちです。また、考えることが苦手になるため、言われたことを繰り返す「反響言語」や動作を真似する「模倣行為」を示すようになります。
前頭側頭型認知症の患者は理性で行動を抑制できないため、状況を読まずに目についたものに即座に反応します。たとえば、人が話している最中に突然ごみを拾い出すなどの行為がこれに当たります。このように周囲の影響を受けやすくなることを「被影響性の亢進」と言います。
脳の側頭葉には言語をつかさどる領域があるため、前頭側頭型認知症では言葉や文章の意味ができない語義失語の症状があらわれることがあります。語義失語では、言葉の意味がわからないため、「海老」をカイロウと読んでしまいます。また、ことわざの意味をたずねても説明することができません。
脳血管性認知症
「脳血管性認知症」は、アルツハイマー型認知症に次いで二番目に多い認知症で、全認知症の2割を占めます。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など、脳の血管が詰まったり破れたりして急激に起こる認知症です。脳血管性認知症では、血管障害が起こった脳の部位によって、記憶障害に加えて、意欲低下、無関心、手足の麻痺など様々な心身症状が発症します(まだら症状)。
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血の原因となる高血圧、糖尿病、脂質異常症などをしっかり治療することで予防や進行の抑制が可能です。
正常圧水頭症
私たちの脳は、頭蓋骨の中で「脳脊髄液(髄液)」という液体に浮いた状態になっています。髄液は脳の脳室と呼ばれる部位で作られ、その後、吸収されて静脈に入ります。髄液の量は作られる量と吸収される量のバランスの上に成り立っているのです。
このバランスがくずれ、脳室に髄液がたまった状態が「水頭症」です。髄液で脳室がふくれると、脳が頭蓋骨に押し付けられ、血行が悪くなるため、認知症の症状が出ます。特に歩行と排尿の中枢がある脳頂部が押し付けられるため、歩行障害や排尿障害が出やすくなります。
診断はCTやMRIなどの画像診断と、腰に針を刺して髄液を抜くタップテストによって行われます。正常圧水頭症は髄液シャント術などの手術によって改善が見込まれる数少ない認知症のひとつです。
アルコール性認知症
お酒を飲む方にあらわれる脳障害です。アルコール性認知症には3つのタイプがあります。一つ目は、アルコールによる低ナトリウム血症で、意識障害を起こします。二つ目はビタミンB1欠乏によって引き起こされるウェルニッケ脳症です。ウェルニッケ脳症では足がふらつき、物がダブって見える複視や幻覚を伴います。三つ目は記憶障害を主症状とするコルサコフ症候群です。記憶障害を埋めるため、作話をします。
そのほか
また、頭部外傷によって、頭蓋骨と脳の間に血液がたまる「慢性硬膜下血腫」や甲状腺の働きが低下にする「甲状腺機能低下症」などでも認知症が認められることがあります。いずれも脳外科手術や投薬によって治療が可能です。
「意味性認知症」 前頭側頭葉変性症の一つ 言葉の意味がわからなくなる
「大脳皮質基底核変性症」 パーキンソン様症状 手や足などの動作が思い通りできない「失行」が認められることがあります。自分の手が自由にならない「他人の手兆候」が有名です。
「進行性核上性麻痺(steel症候群)」 パーキンソン症状を伴う認知症 進行すると目を上下に動かせなくなる「眼球運動障害」が見られます。
「一過性全健忘」数時間から数日にわたって意識障害が続きます。外部からは一見普通にみえますが、本人はその間のことを覚えていない状態です。脳内の血流や血圧が一時的に乱れることが原因であると考えられています。治療には抗てんかん薬のカルバマゼピン(テグレトール)、レベチラセタム(イーケプラ)、ラモトリギン(ラミクタール)などが使われます。
「高齢初発てんかん」認知症のなかにはてんかんを併発するものが少なからずあります。高齢者に多いのは複雑部分発作と呼ばれるタイプのてんかんで、短時間(通常30~60分)意識が遠のき、その間の記憶がありません。口をもぐもぐ動かす口部自動症や幻嗅、味覚異常を伴うことがあります。脳波異常が原因ですが、発作時に測定する必要があるため診断が難しくなっています。カルマバゼピン(テグレトール)などの抗てんかん薬で、低用量処方でコントロールすることができます。
「薬剤起因性老年症候群」薬剤起因性老年症候群とは、医師が処方した薬の副作用によって発症する認知症です。高齢者は代謝機能が低下しているため、薬が体内に蓄積し、作用や副作用が強く出てしまうことが原因として考えられています。複数の病院にかかり、多くの薬を処方されている高齢者には特に注意が必要です。
薬剤起因性老年症候群では、特に睡眠薬、抗不安薬などのベンゾジアゼピン系薬剤と認知機能低下や過鎮静、問題行動などの症状の間に因果関係があるとされています。薬剤起因性老年症候群の割合は、全ての認知症の1〜2割に相当するのではないか、とする見解もあり、老年医学会では「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を作成し、ベンゾジアゼピン系薬剤に対する注意を喚起しています。
認知症の症状
認知症の症状には、多くの認知症型に共通して認められる記憶障害を中心とした「中核症状」と、中核症状に伴って二次的に発症する「行動・心理症状」があります。認知症とは、記憶障害の他に、「失語、失行、失認、実行機能障害」のどれかが1つ以上加わり、その結果、社会生活あるいは職業上明らかに支障をきたし、かつての能力レベルの明らかな低下が見られる状態を指します。
中核症状
認知症の主症状である「記憶障害、実行機能障害、見当識障害、失認、失行、失語」などは、多くの認知症患者に共通して認められるため、「中核症状」と呼ばれています。
認知症の記憶障害では記銘力が衰えるため、最近の出来事から忘れていきます。症状が進行すると、学習した知識(意味記憶)、自分が体験した思い出(エピソード記憶)の順で失われていき、最終的には、自転車に乗るなど、身体で覚えている記憶(手続き記憶)も消えてしまいます。
実行機能障害になると、物事を順序立てて行うことができなくなります。今までできていた仕事や家事に支障をきたし、旅行の計画なども立てられなくなってしまいます。
見当識障害とは、自分の置かれている状況がわからなくなることを指します。知っている場所なのにどこだかわからない、知っている人なのに誰だかわからない、と言うように認識力に障害が出ます。
失認は、視力や聴力に問題がないのに認知できない状態、失行は目的通りの行動ができなくなる状態、失語は言葉の理解や会話が困難になる状態を指します。
行動・心理症状(BPSD)
行動・心理症状は、中核症状に伴って現れる症状で、認知症の型や患者によって症状が異なります。このような症状には、妄想、幻覚、不眠、食に対する異常、不潔行為などがあります。また、認知症のストレスから、うつ、作話、攻撃的行動、徘徊に至ることもあります。
認知症の初期においては、患者本人も自分の異常を認識できるため、大きな不安にさらされます。また、症状によって家族など周囲との軋轢が高まると、さらなるストレスにさらされることになります。
認知症が進行すると認知機能の障害によって、周囲の状況が認識できなくなります。その結果、家で家族と一緒にいても、知らない場所で知らない人たちに囲まれていると思い込むようになります。健常者でも突然外国に連れていかれ、知らない人たちに囲まれたらストレスなように、認知症の患者も大きなストレスを抱え込むことになります。
認知症の行動・心理症状の多くはこのような心理的ストレスが原因であると考えられています。周囲の人が認知症を理解し、サポートすることによって、行動・心理症状は緩和されることが知られています。
認知症患者の行動には、その人なりの理由があることが少なくありません。認知症初期の場合、自分自身の変化に対して不安を抱き、引きこもりがちになります。また、自分の症状を隠し、失敗を正当化するために嘘をつく「作話」が見られるようにもなります。特に自分がものを紛失したことを認めずに「盗られた」と言い始めるのは認知症の典型的な症状です。このような「物盗られ妄想」から、家族ですら信じることができなくなり、暴言を吐いたり、暴力にエスカレートすることもあります。
さらに、見当識が衰えて自分のいる場所や家族の顔が認識できなくなると、自分の家を探す目的で徘徊するようになってしまいます。
認知症患者の看護には、このような患者の心情の理解と適切なサポートが不可欠になります。認知症で一番不安を抱えているのは患者自身です。家族や看護者は、患者に寄り添い、患者のプライドを傷つけないように患者ができないことをそっとサポートしてあげましょう。
認知症の診断
認知症の診断は問診と脳の画像解析によって行います。通常は10~40分程度の口頭のテスト(ミニメンタルステート(MMSE)、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、ADAS-jcogなど)を受けていただきます。その後、医師が必要と判断すれば、CT、MRI、PETなどによって脳の画像撮影、脳シンチグラフィー検査(脳血流SPECT検査)などを行って認知症の型を判定することになります。
認知症の治療
アルツハイマー型認知症
もっとも患者数の多いアルツハイマー型認知症ですが、残念ながら根本から治療する方法は現在ありません。しかしながら、進行を抑制する薬が認可されています。
脳血管性認知症
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血によって脳がダメージを受けた結果起こります。神経細胞は基本的に再生しないため、脳の損傷を完全に回復することはできません。むしろ脳梗塞や脳出血の原因となる高血圧、糖尿病、高脂血症を予防することが重要です。
レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症と同じく、根本から治療したり進行を止めたりする方法は今のところありません。認知機能の低下に対してはアルツハイマー病の治療薬、パーキンソン様症状についてはパーキンソン病の治療薬を使うことがあります。
レム睡眠行動障害にはリボトリールが奏功するものの、パーキンソニズムが悪化する可能性があるので注意が必要です。
レビー小体型認知症では多くの薬剤(デパス、PL、ガスターなど)に対して過敏になり、副反応が生じやすくなるので注意が必要です。特に薬剤による副作用でパーキンソン症状が悪化することがあります。
前頭側頭型認知症
残念ながら他の認知症と同じく決定的な治療法はありません。生活環境を整えたり、短期入院などによって問題行動に対処していくことになります。
正常圧水頭症
頭蓋骨に小さな穴をあけ、細いチューブで余分な髄液を逃がして脳室の圧力を下げるシャント手術を行います。
薬剤起因性老年症候群
飲んでいる薬がどんどん増えてしまって、今までのはやめてもいいのかね。
自分で決めず、まずは医師に相談しましょう。
医師の指導のもと、飲んでいる薬を減らしていきます。向精神薬や抗不安薬の中には突然やめてしまうと危険なものもあります。自分で判断するのではなく、必ず医師にご相談ください。
また、睡眠薬などを飲んでいる方は、飲まなくても眠れるよう生活のリズムを整えましょう。下記の「光療法」を使えば薬に頼らずに睡眠のリズムを改善できます。
薬以外の治療法
生活環境整備
認知症になると出来ることが徐々に減っていきます。本人が出来なくなったことを自尊心を傷つけずにサポートしてあげられる体制を整えることが大切です。また、転倒や徘徊などのリスクに対処する必要もあります。
食事
認知リハビリテーション
認知力を維持するためには、書き取りや計算ドリル、脳トレなどが有効です。毎日少しずつ行うことによって認知症の予防にもなります。そのほかに昔の出来事を思い出したり、囲碁・将棋・麻雀などの知的ゲームを楽しむことも認知力の維持に有効です。
音楽療法
好きな音楽を聴く「受動的音楽療法」と、歌などを歌う「能動的音楽療法」があります。音楽のリラックス効果によって行動・心理症状が抑制されることが報告されています。音楽以外にも絵画、陶芸など創造性を刺激する趣味は認知症の進行を遅らせる効果があると言われています。
脳を活性化させるばかりでなく、不安や焦燥をやわらげたり、注意や記憶などの認知機能にも有効
認知機能にはビタミンB類が重要です。通常の食事では不足しませんが、胃の切除を受けた高齢者などでは不足することがあります。
活動療法
ウォーキング、体操、ダンスなど、体を動かすことによって行動・心理症状の軽減を目指します。身体を動かすことによって運動機能や心肺機能の維持も期待できます。
ペット療法
犬や猫などペットと過ごすことは行動・心理症状の軽減につながります。
アロマ療法
特定の匂いは、直接脳の海馬に働きかけて記憶を呼び戻すことがあります。アロマ療法では、アロマテラピーによって脳を刺激すると同時に、リラックス効果によって行動・心理症状を抑制します。
アロマは花やハーブから抽出した精油という成分です。BPSDの緩和に使われますが、中核症状にも効果があることが明らかになってきました。
認知症では嗅覚の機能が低下してます。また、嗅覚を刺激すると大脳辺縁系から前頭前野が活性化することもわかっています。
劇的な効果は期待できませんが、一定の効果がみられることが実証されています。
光療法
太陽と同じ波長の光を浴びることによって体内時計を正常化し、睡眠障害を改善します。認知症に伴う「うつ」などの症状の改善にも役立つという報告もあります。
認知症の方への対応の仕方
普段の心構え
認知症と診断されても、本人にできることはたくさん残っています。家庭内で本人の役割や出番を作って、前向きに日常生活を送ることが大切です。「認知症は病気である」ということを理解して、本人の気持ちの寄り添った対応を心がけましょう。認知症の初期は患者本人も不安で辛い思いをしています。家族や周りの人がイライラしたり煙たがると、本人が消極的になりさらに症状の進行を早めることになります。
否定しない
認知症では妄想や幻覚、暴言・暴力などに的確に対処することが必要となります。認知症で一番辛いのは患者本人であることを認識し、患者の言い分が荒唐無稽であっても「無視する」、「馬鹿にする」などの否定的な態度をとってはいけません。また、失敗を叱る、怒るなどの行為も行動・心理症状の悪化につながります。
急かさない
急かすとできることもできなくなってしまします。自分でやろうとしているときはなるべく見守りましょう。間違ったことでもすぐに訂正や説得せず、別のことを提案して場面を切り替えましょう。
命令しない
ほめる
行動の理由を考える
認知症患者の行動は、不可解に見えても往々にして患者自身の理由があります。否定的に接するのではなく、行動の理由を読み取って共感する姿勢を見せて安心させることで行動・心理学的症状を和らげることができます。
ストレスをため込まない
「どうしたら円滑・円満に事が運ぶか」ということを優先して対応することで、より良い関係を保つことができますが、それ以上に大切なことは看病する側がストレスを溜め込まないことです。すべてを自分で抱え込まずに家族で分担し、介護などの補助をうまく活用しましょう。
コミュニケーション方法
- 相手の顔を見て話す。
- 名前で呼びかける。
- ゆっくりと具体的な言葉で話す。「あれ」、「それ」などの指示語は避ける。
- 理解しているか確認しながら話す。
- 理解していない場合には、ゆっくり繰り返す、ジェスチャーを交えるなどの工夫をする。
日常生活の工夫
- 1日の予定をボードやメモに書いておく。
- ものの保管場所を忘れないように、引き出しなどにラベルを貼る。
- 大切な約束や大事な連絡先は手帳にメモする。
- その日の出来事を日記に書いてもらう。
・困った行動への対処法
被害妄想
認知症では「物を盗られた」などの物盗られ妄想や「妻が浮気をしている」などの嫉妬妄想がよくあります。このような場合、辻褄があってなくても本人は確信を持っているので、理屈で言い聞かせても効果はありません。否定は逆効果になります。
正常な人でも物をしまった場所を忘れてしまうことはよくありますが、認知症では、自分がしまったことを忘れるため、盗まれたと思い込んでしまいます。
このような場合には、頭から否定せずにまずは話を聞きましょう。他の提案をして、気持ちをほかに向かわせる工夫も効果的です。
一緒に探して本人に見つけさせるようにしましょう。見つけてあげると「やっぱり隠していた」と思われます。
抑肝散 メマンチン(メマリー)、フェルラ含有サプリメントが効くことがあります。
フェルラ含有サプリメント:米ぬかの主成分 フェルラ酸 抗酸化作用 西洋当帰
物を度々なくしても怒らずに話を聞くことも大事です。
幻覚
レビー小体型認知症では、しばしば、存在しないものが見える「幻視」の症状が現れます。幻視では、本来そこにいるはずのない人物などが見えます。幻視は気のせいではなく、本人には実際に見えています。幻視を頭から否定するのではなく、手でさわらせて幻視であることを理解させ、「大丈夫ですよ」と安心させてあげてください。
幻視の原因となる物がある場合にはそれを取り除きましょう。また、幻視は薄暗い場所でよく起こります。電灯を増やすなどして家の中を明るくしましょう。
不眠
過食・異食
徘徊
徘徊は自分の居場所がわからなくなり不安になったり、目的を忘れてしまうなどの理由から起こります。徘徊すると事故の原因になります。日頃から名前や連絡先が分かるものを身につけてもらったり、最寄りの交番などに相談して、保護されたときに連絡してもらえるようにしておきましょう。
「帰宅願望(夕暮れ症候群)」記憶の中の自分の家に帰ろうとする 夕方が多いと言われているが、必ずしも夕方に限らない。「もう少しここにいましょう。おいしいお茶がありますから」「今日は遅いから泊まって明日の朝明るくなったら帰りましょう」などと言う。また、一緒に出掛けてしばらく歩いてから家に帰る
最近では居場所のわかるGPSタグやGPSを埋め込んだ靴も販売されています。このようなグッズの活用も有効かもしれません。
玄関にセンサーを付ける。玄関の鍵を手の届かないところにつける。
失禁
失敗をせめないでください。寝る前に定期的にトイレに誘ったり、貼り紙をしたり夜は照明をつけてトイレの場所をわかりやすくするなどの工夫をしましょう。
おむつ
不潔行為
介護グッズ
介護に疲れたら
介護する家族に負担がかかり過ぎないよう、様々なサポート方法があります。区などの相談窓口を利用しましょう。わからなければクリニックへどうぞ。
同じような経験をしている方と話をすることはストレスの軽減にもなりますし、有益なアドバイスや情報を得る機会にもなります。積極的にそのようなコミュニティーと関わりましょう。
介護の手続き
要介護認定されると、訪問介護、看護、通所サービス、短期入所サービス、特養や老健などの施設入居サービス、介護用品のレンタル、ケアマネージメントなどが受けられるようになります。
要介護申請は市区町村などお住いの自治体窓口で申請書をもらい、記入して提出します。その後、申請に基づいて主治医の意見書が作成され、自治体職員による訪問調査が行われます。その後、介護認定審査会において審査が行われ、要支援1~2、要介護1~5の7つの区分のいずれかに認定され、区分に応じて利用限度額が決まります。利用者は利用限度額内でサービスを受けられます。なお、全費用の1割を利用者が負担します。
要介護審査の認定結果に納得がいかない場合は「区分変更」を行います。区分変更とは、認定有効期間内(申請から原則6~12か月)でも心身の状態が著しく変化した場合には要介護認定の審査を再度受けることができるとする制度です。
区分変更が難しい場合には「不服申し立て」をすることもできます。
- 自宅で受けるサービス(訪問介護、訪問看護)
ホームヘルパーや看護師による訪問サービスを受けることができます。 - 通所により受けるサービス
デイサービス(通所介護)とデイケア(通所リハビリテーション)があります。 - 短期入所により受けるサービス
ショートステイができます。利用上限は連続30日間です。 - 施設入居により受けるサービス
特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設などの施設に入居した場合に受けられるサービスです。 - 介護用品のレンタル
車いす、介護ベッド、バリアリーフなどの改修費用の補助など。
要介護認定の申請
- ステップ1市区町村へ申請
自治体の窓口で申請したい旨を伝えます。
申請には申請書と介護保険被保険者証が必要です。
申請書をもらい、必要事項を記入して提出します。 - ステップ2主治医意見書
- ステップ3聞き取り調査(認定調査)
- ラベル区分変更
心身の状態が著しく変化した場合には要介護認定の審査を再度受けることができる
施設
介護老人保健施設
介護とリハビリテーション 入所期間は原則3か月
病院を退院したが自宅に戻るには早いという人が対象
特別養護老人ホーム
要介護3以上 終身利用が可能
日常生活の世話、機能訓練、健康管理、看護
介護療養型医療施設
有料老人ホーム
健康型、住宅型、介護付きの3タイプがある。
健康型は介護が必要になったら退去、住宅型は自治体の介護サービスを利用、介護付きは施設に介護サービスが付いている。
グループホーム
9人以下で共同生 日常生活の面倒を見てもらえる 機能訓練
ケアハウス
60歳以上 生活上の不安があるが家族が介護できないもの
サービス付き高齢者向け住宅
サービス 緊急通報 安否確認 生活相談が義務づけされている。
高齢単身、夫婦のみ世帯が対象
ショートステイ 施設
認知症の予防
認知症の進行
アルツハイマー型認知症
認知症はお年寄りの病気と考えがちですがそうではありません。症状が出るのが60~70歳だとすると、実は脳の異常はその20年前から始まっているのです。つまり、40~50歳ころから病気は密かに水面下で進行しているのです。
日本で一番多いアルツハイマー型認知症は脳の神経細胞のなかに異常タンパク質 (アミロイドベータやタウタンパク質 など)がたまって神経細胞が障害を受けることによって発症します。このような異常タンパク質の蓄積は、認知症の症状がでる20年ほど前から始まります。
- ~50歳~無症状期
- 脳に病変が出はじめるが、まだもの忘れなどの症状はない。
- ~60歳~軽度認知障害(MCI)
- もの忘れなどの症状が出はじめるが、自立した生活を送ることができる。
- 適切なリハビリテーションで無症状期に戻れる可能性がある。
- ほうっておくと5年間で半分の人が認知症に移行する。
- ~70歳~認知症
- もの忘れがひどくなり、徐々にサポートがないと生活ができなくなる。
- ほとんどの認知症では症状の緩和はできるが、根本的治療法はない。
脳に異常タンパク質がたまり始めてから10年ほどはもの忘れなどの症状もでてきません。この時期を「無症状期」といいます。
脳に病変が出始めて、だいたい10年後にもの忘れがはじまります。この時期はもの忘れはあるものの、自立した生活ができますので、認知症であるとは言えません。このような認知症の前段階を「軽度認知障害(MCI)」と呼びます。
MCIのうち、10%程度の方が毎年認知症に移行していきます。MCIと診断されてから、半分の人が5年で認知症になることになります。 一方で、MCIの10~40%程度は、運動などのリハビリテーションを取り入れることによって、無症状期へと戻すことが可能であると報告されています。
脳に病変が出はじめて20年後には、多くの人が軽度認知障害から認知症へと移行します。現在、薬で認知症の進行や症状を緩和することはできますが、 ほとんどの認知症の根本的な治療法はありません。 アルツハイマーなどの認知症の症状が出てから脳内の病変を取り除いても、その段階では多くの神経細胞が死滅しているため、もとには戻らないことが報告されています。つまり、一度認知症の症状が出てしまったらもとには戻らないのです(ただし、正常圧水頭症など治療が可能な認知症も一部あります)。
したがって、認知症は症状が出る前(軽度認知障害以前の段階)に予防する必要があります。
発症は20年も前なんて、どうしたら早期発見・予防ができるのでしょうか?
これから予防に役立つ様々な方法を説明していきます。
脳血管性認知症
脳血管性認知症は、日本で二番目に多い認知症です。アルツハイマー型と脳血管性認知症の患者の割合は、すべての認知症患者の8~9割にものぼります。
脳血管性認知症は、 脳梗塞や脳出血によって脳の神経細胞が障害を受けた結果起こります。神経細胞は基本的に再生しないため、脳の損傷を完全に回復することはできません。
脳梗塞や脳出血の危険因子は、高血圧、糖尿病、高脂血症などの「生活習慣病」です。生活習慣病は、30~40歳代から発病します。そのままほうっておくと、50~60歳代に脳梗塞や脳出血によって身体に麻痺が起こったり、認知症になる危険があります。
したがって、脳血管性認知症予防には生活習慣病の予防が不可欠です。
- 30~40歳高血圧、糖尿病、高脂血症
- 60歳~脳血管性認知症
脳の予備力
アルツハイマーやレビー小体型認知症は、神経細胞にアミロイドベータなどの異常タンパク質が蓄積し、神経細胞が死滅することによって引き起こされます。ところが、研究者が多くの人の死後に脳を解剖して調べたところ、異常タンパク質が脳内にたくさん蓄積しているにもかかわらず、健康な神経細胞が多く、認知症を発症しなかった人たちが多数いることがわかってきました。
このような研究の先駆けが1986年に米国で開始された「ナン・スタディ」です。ナン・スタディでは、678人の修道女の脳を死後に調べました。その結果、アミロイドベータが大量に蓄積しているにもかかわらず、認知症を発症しない人が3分の1もいることが明らかになったのです。
脳に病変があるにもかかわらず、認知症を発症しないメカニズムについては、はっきりとはわかっていませんが、残った健康な神経細胞が障害された神経細胞の代わりに働いているのであろうと推測されています。このような脳の予備の力を「脳の予備力」と呼びます。
このような研究結果から、脳の予備能を高めることが認知症予防に有効であると考えられるようになって来ました。
認知症の予防
前述したように、脳の予備能が高ければ、脳に病変が生じても認知症になりにくくなります。では、どのようにすれば脳の予備能を高めて認知症を予防することができるのでしょうか?
運動
認知症予防への効果が科学的に実証されているのは運動です。なかでも有酸素運動は老化を抑制するため、認知症の予防に効果があるとされています。 とくに歌いながらダンスするなどのマルチタスク運動は効果が高いと言われています。
知的活動
食事
カロリーの摂りすぎは避けましょう。
睡眠
社会参加
ストレスの排除
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