認知症の方への対応の仕方
① 心構え
認知症と診断されても、本人にできることはたくさん残っています。家庭内で本人の役割や出番を作って、前向きに日常生活を送ることが大切です。「認知症は病気である」ということを理解して、本人の気持ちの寄り添った対応を心がけましょう。認知症の初期は患者本人も不安で辛い思いをしています。家族や周りの人がイライラしたり煙たがると、本人が消極的になりさらに症状の進行を早めることになります。
- 否定しない
- せかさない
- 命令しない
- ほめる
- 行動の理由を考える
- ストレスをため込まない
認知症では妄想や幻覚、暴言・暴力などに的確に対処することが必要となります。認知症で一番辛いのは患者本人であることを認識し、患者の言い分が荒唐無稽であっても「無視する」、「馬鹿にする」などの否定的な態度をとってはいけません。また、失敗を叱る、怒るなどの行為も行動・心理症状の悪化につながります。
急かすとできることもできなくなってしまします。自分でやろうとしているときはなるべく見守りましょう。間違ったことでもすぐに訂正や説得せず、別のことを提案して場面を切り替えましょう。
認知症患者の行動は、不可解に見えても往々にして患者自身の理由があります。否定的に接するのではなく、行動の理由を読み取って共感する姿勢を見せて安心させることで行動・心理学的症状を和らげることができます。
「どうしたら円滑・円満に事が運ぶか」ということを優先して対応することで、より良い関係を保つことができますが、それ以上に大切なことは看病する側がストレスを溜め込まないことです。すべてを自分で抱え込まずに家族で分担し、介護などの補助をうまく活用しましょう。
② コミュニケーション方法
- 相手の顔を見て話す。
- 名前で呼びかける。
- ゆっくりと具体的な言葉で話す。「あれ」、「それ」などの指示語は避ける。
- 理解しているか確認しながら話す。
- 理解していない場合には、ゆっくり繰り返す、ジェスチャーを交えるなどの工夫をする。
③ 日常生活での工夫
認知症になると出来ることが徐々に減っていきます。本人が出来なくなったことを自尊心を傷つけずにサポートしてあげられる体制を整えることが大切です。また、転倒や徘徊などのリスクに対処する必要もあります。
- 1日の予定をボードやメモに書いておく。
- ものの保管場所を忘れないように、引き出しなどにラベルを貼る。
- 大切な約束や大事な連絡先は手帳にメモする。
- その日の出来事を日記に書いてもらう。
④ 困った行動への対処法
被害妄想
認知症では「物を盗られた」などの物盗られ妄想や「妻が浮気をしている」などの嫉妬妄想がよくあります。このような場合、辻褄があってなくても本人は確信を持っているので、理屈で言い聞かせても効果はありません。否定は逆効果になります。
正常な人でも物をしまった場所を忘れてしまうことはよくありますが、認知症では、自分がしまったことを忘れるため、盗まれたと思い込んでしまいます。このような場合には、頭から否定せずにまずは話を聞きましょう。他の提案をして、気持ちをほかに向かわせる工夫も効果的です。一緒に探して本人に見つけさせるようにしましょう。見つけてあげると「やっぱり隠していた」と思われます。
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幻覚
レビー小体型認知症では、しばしば、存在しないものが見える「幻視」の症状が現れます。幻視では、本来そこにいるはずのない人物などが見えます。幻視は気のせいではなく、本人には実際に見えています。幻視を頭から否定するのではなく、手でさわらせて幻視であることを理解させ、「大丈夫ですよ」と安心させてあげてください。
幻視の原因となる物がある場合にはそれを取り除きましょう。また、幻視は薄暗い場所でよく起こります。電灯を増やすなどして家の中を明るくしましょう。
徘徊
徘徊は自分の居場所がわからなくなり不安になったり、目的を忘れてしまうなどの理由から起こります。徘徊すると事故の原因になります。日頃から名前や連絡先が分かるものを身につけてもらったり、最寄りの交番などに相談して、保護されたときに連絡してもらえるようにしておきましょう。
「帰宅願望(夕暮れ症候群)」記憶の中の自分の家に帰ろうとする 夕方が多いと言われているが、必ずしも夕方に限らない。「もう少しここにいましょう。おいしいお茶がありますから」「今日は遅いから泊まって明日の朝明るくなったら帰りましょう」などと言う。また、一緒に出掛けてしばらく歩いてから家に帰る
最近では居場所のわかるGPSタグやGPSを埋め込んだ靴も販売されています。このようなグッズの活用も有効かもしれません。 玄関にセンサーを付ける。玄関の鍵を手の届かないところにつける。
失禁
失敗をせめないでください。寝る前に定期的にトイレに誘ったり、貼り紙をしたり夜は照明をつけてトイレの場所をわかりやすくするなどの工夫をしましょう。 おむつ
不眠
暴力・暴言
過食・異食
不潔行為
⑤ 介護に疲れたら
介護する家族に負担がかかり過ぎないよう、様々なサポート方法があります。区などの相談窓口を利用しましょう。同じような経験をしている方と話をすることはストレスの軽減にもなりますし、有益なアドバイスや情報を得る機会にもなります。積極的にそのようなコミュニティーと関わりましょう。
介護関係の各種手続き
① 要介護認定とは
要介護認定されると、訪問介護、看護、通所サービス、短期入所サービス、特養や老健などの施設入居サービス、介護用品のレンタル、ケアマネージメントなどが受けられるようになります。
要介護申請は市区町村などお住いの自治体窓口で申請書をもらい、記入して提出します。その後、申請に基づいて主治医の意見書が作成され、自治体職員による訪問調査が行われます。その後、介護認定審査会において審査が行われ、要支援1~2、要介護1~5の7つの区分のいずれかに認定され、区分に応じて利用限度額が決まります。利用者は利用限度額内でサービスを受けられます。なお、全費用の1割を利用者が負担します。
要介護審査の認定結果に納得がいかない場合は「区分変更」を行います。区分変更とは、認定有効期間内(申請から原則6~12か月)でも心身の状態が著しく変化した場合には要介護認定の審査を再度受けることができるとする制度です。 区分変更が難しい場合には「不服申し立て」をすることもできます。
- 自宅で受けるサービス(訪問介護、訪問看護)
- ホームヘルパーや看護師による訪問サービスを受けることができます。
- 通所により受けるサービス
- デイサービス(通所介護)とデイケア(通所リハビリテーション)があります。
- 短期入所により受けるサービス
- ショートステイができます。利用上限は連続30日間です。
- 施設入居により受けるサービス
- 特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設などの施設に入居した場合に受けられるサービスです。
- 介護用品のレンタル
- 車いす、介護ベッド、バリアリーフなどの改修費用の補助など。
② 要介護認定の申請方法
- ラベルu003cstrongu003e市区町村へ申請u003c/strongu003e
自治体の窓口で申請したい旨を伝えます。
申請には申請書と介護保険被保険者証が必要です。
申請書をもらい、必要事項を記入して提出します。 - ラベル主治医意見書
- ラベル聞き取り調査(認定調査)
- ラベルu003cstrongu003e区分変更u003c/strongu003e
心身の状態が著しく変化した場合には要介護認定の審査を再度受けることができる
③ 介護施設
・介護老人保健施設
病院を退院したが自宅に戻るには早いという人が対象の 介護とリハビリテーション施設です。入所期間は原則3か月以内となります。
・ 特別養護老人ホーム
要介護3以上の方が対象となります。 終身利用が可能であり、日常生活の世話、機能訓練、健康管理、看護などのサービスが受けられます。
・ 介護療養型医療施設
・ 有料老人ホーム
健康型、住宅型、介護付きの3タイプがあります。健康型は介護が必要になったら退去、住宅型は自治体の介護サービスを利用することが可能、介護付きは施設に介護サービスが付いています。
・ グループホーム
9人以下で共同生活するタイプの施設です。日常生活の面倒や機能訓練などを行ってもらえます。
・ ケアハウス
60歳以上で生活上の不安があるものの、家族が介護できないも方が対象となります。
・ サービス付き高齢者向け住宅
高齢単身、夫婦のみ世帯が対象となります。 サービスとして緊急時の通報、安否確認、生活相談が義務づけされています。